かおりちゃんの
クリスマスのねがいごと
あなたにおくる おはなしのほん
ますやま あつし作 CABジャパン編集 ヴァレリー・ウェブ画
津田かおりさま
メリークリスマス! これはあなたのために特別に作られた本です。
今年のクリスマスもかおりんにとって 幸せな日になりますように☆
2006年12月24日
小野優子
郵便受けをのぞくと、見慣れない模様をあしらった、 一通の手紙が入っていました。 そこには消印も、大分県大分市の かおりちゃんの住所もありません。 ただ、『津田かおり様』という文字があるだけです。 封を切ったかおりちゃんは驚きました。 そこには、こんな文章があったのです。
津田かおり様 わしはサンタクロース。 クリスマスももうすぐじゃが、いかがお過ごしかな?
サンタクロース?? かおりちゃんの頭はいっきに真っ白になりました。
かおりちゃんはやっぱりそうかと思いました。 これは最近、近所にできたケーキ屋の、 ダイレクトメールに違いありません。 でも手紙の文章はまだまだ続きます。
プレゼントの用意ができると、 こんどはトナカイたちの準備をしなきゃならん。 金の鈴が付いたひもを、1頭1頭つけていくんじゃ。 これがあの有名な 「ジングルベル」という曲になるんじゃよ。
かおりちゃんは、信じられない、と思いました。 サンタクロースなんて架空の人物で そんな話はとっくに卒業したはずなのに・・・ でも手紙には・・・
サンタクロースなんているもんか、 と思っておるのじゃろう。 サンタクロースを見たかったら、 クリスマスイブにサンタクロースの国にくるとよい。 世界中の国々に飛び立つサンタクロースのそりを、 一般公開しておる。
かおりちゃんは、またわからなくなりました。 どうやらこれはケーキ屋どころではなさそうです。 もしかするとフライドチキンの店かもしれない!? かおりちゃんの脳裏に、小太りで、 めがねをかけ、いつもニコニコして街角に立っている、 とあるおじいさんの姿が浮かびました。
わしはみんなの視線を浴びながらそりに乗り込む。 まるでスターになったきぶんじゃ。あたりは大騒ぎさ。 みんなの寝顔をみるのもいいが、 幸せそうな笑顔をみるのは、 もっとよいもんじゃよ。
かおりちゃんはちょっとばかり想像してみました。 もし自分がサンタクロースの国にいけたら! なんてわくわくする光景なのでしょう。 そうかこれは旅行会社のパンフレットなんだ!? 「冬休みはスキーをかねてサンタクロースの国へ!!」 こんなキャッチコピーがうかびました。
みんなわしに手をふってくれておる。 いよい出発じゃ。忘れ物はないかな?
それからわしは、トナカイたちに 「さあいこう!」と声をかける。 するとそりはあっという間に空の上。 空気は冷たいが、とてもよい気持ちじゃ。 いちど乗せてやりたいくらいじゃよ。
この手紙は航空会社のパンフレットかもしれない!? とかおりちゃんは考えました。 北欧の空を遊覧飛行する会社なのです。 でも、かおりちゃんは高いところはちょっと苦手です。
めざす家に到着すると、さあ仕事じゃ。 エントツから、といいたいところじゃが、 近頃はエントツのない家が多いから大変じゃ。 なんとか家に入りプレゼントを置いたら、 すぐ次の子の家にいかなきゃならん。 プレゼントのリストは、 子供たちの名前でいっぱいじゃ。
こんどは警備会社のパンフレットかな? とかおりちゃんは思いました。 『サンタクロースも入れない防犯装置』じゃ、 サンタクロースがかわいそうです。
目のまわるような夜を過ごして クリスマスの朝に帰ってくるころは、 もうへとへとじゃが気分はそう快じゃ。 この一夜のために、一年を過ごしておるからな。 わしは妻に子供たちの様子をはなしてやる。 あの子は今年もいい子にしておったよ、 というと、妻はとても嬉しそうじゃ。 そうそう、わしはかおりちゃんの、子供のときの 寝顔を見たこともあるんじゃよ。
結婚案内のパンフレットだったのか、 とかおりちゃんは思いました。 でもサンタクロースにおくさんがいるなんて!
クリスマスの前には、 たくさんのおもちゃを作る仕事がわしを待ってお る。 家では一日中にぎやかな音がしているが、 それはおもちゃを作る音なんじゃ。
こんどは隣町にできた大きなおもちゃやさんかな? と、かおりちゃんは考えました。 そして子供のころ、目が覚めると、 きまって枕元に置かれていた プレゼントのことを思いうかべました。 昨夜まではなかったおもちゃが、朝そこにあるのは、 とても不思議で、魔法のようでした。
わしは空をひとっ飛び。 ヨーロッパ、アメリカ、アフリカ、アジア、そして 大分市にもプレゼントを届けにいくぞ。 プレゼントを待っとる子供たちは世界中におるからな。 そうじゃ、忘れておった。 わしがこんな手紙を書いたのは、理由がある。 プレゼントが無事おまえさんへ届くには、 ひとつ条件があるからなんじゃ。 それはクリスマスの朝に、一言こういえばよい。 つけくわえるなら、できるだけ明るく、楽しくやってくれ。
かおりちゃんは、いそいで最後の紙をめくりました。 そこには・・・
「メリークリスマス!」
かおりちゃんは、 こうじくんと光ちゃんとあゆみちゃんへの プレゼントを選びにコートをはおると、 楽しそうに出かけて行きました。 ポケットには、 サンタクロースからの手紙が入っています。